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2020.07.11
外科・整形外科
こんにちは。動物メディカルセンターの獣医師 盛岡です。
今年もやってきました!7月14日(ないし)は『内視鏡の日』です!
以前もお話しましたが、『内視鏡の日』はヒトの医療において制定されたものです。内視鏡は動物でも応用され活躍しています。
その内視鏡の日に因んで前回3年前の2017年6月24日には、オモチャを誤って飲み込んでしまったワンちゃんに対して内視鏡を使ってオモチャを摘出したお話を紹介しました(こちらの記事もまだ読んでいらっしゃらないなら是非ご覧ください!)。今回は内視鏡で胃のポリープを発見し、生検(病変部の一部を採取すること)・診断を行ったワンちゃんのお話をしようと思います。
今回来院したのはダックスフンドさんです。嘔吐の後に立てなくなり夜間の病院に掛かられ、翌日当院に受診されました。翌日には立てるようになったそうですが食べたそうにするが食べれない、水やご飯を食べると吐いてしまう、お腹が張っているとのことでした。
検査を行うと、胃の中に食べた食事が充満しており、それが数時間経過しても胃から小腸へ流れていかない状態でした。
これがその時のバリウム検査のレントゲン写真です。一日たっても胃の中にバリウムが残っています。
胃の運動性には問題はないのにもかかわらず、この様な異常があったため、胃の出口である胃幽門部において狭窄させる病変や異物が詰まっている可能性を考えて内視鏡検査を行うこととなりました。
全身麻酔をかけて、内視鏡を胃の中に入れた所です。胃の中には食べたサツマイモが少し残っていました。
次に幽門部を確認しています。幽門部にポリープがありました。表面がポコポコしています。幽門部にポリープがあることで胃の出口がとても狭くなっていました。そのため通常なら内視鏡は胃の出口を通過し小腸も確認することができるのですが、この子の場合は胃から小腸に内視鏡を入れることができませんでした。
続いてポリープに向かって生検鉗子(病変部の一部を掴んで採取する器具)を伸ばしています。
ポリープを鉗子で掴んで引っ張り、組織を採取しました。
採取したポリープの組織は病理組織検査に提出して診断を行いました。結果は「炎症性ポリープ」であり、良性の病変でした。これらのことから幽門部の炎症性ポリープによる幽門狭窄症と診断しました。
胃の病変は良性ではありましたが、このポリープが影響して流動食を少量ずつでしか食べることができず、さらに嘔吐が続いたことで、徐々に体重が減ってしまいました。そのため、飼い主様には手術によるポリープの摘出を提案しました。16歳と高齢のダックスフンドさんでしたが手術は無事に成功しました。
その後は順調に回復し、今では自分からご飯もしっかり食べられるようになり、体重も元通りになりました。
このように、病変部を肉眼的に確認し、病気の確定診断まで至るのに内視鏡は非常に有効でした。そして最適な治療に繋げていくことができたと感じています。