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2020.04.25

日記

戦慄の診察室

こんにちは。
動物メディカルセンター箕面 獣医師の上田です。
今回は、犬猫ではない生き物のお話。

それは突然の悲鳴から始まった。
午前中の診察が途切れた束の間の瞬間だった。
女性スタッフが叫びながら診察室から飛び出してきた。
何があったのかと診察室を覗いてみた。

その時の写真がこちら。

ぱっと見、何に驚いたのかわからなかった。

が、

お気づきになられただろうか?

そう、

時計の近くに黒い塊があるのを。。。

では、ズームしてもう一度。


お分りいただけただろうか?

中央の胴体から左右に細長い足が4対。
そう、そこにいたのは蜘蛛。
デカいッ!
いつも豆粒くらいの蜘蛛はよく見かける。近づくとピョコピョコ飛び跳ねて逃げていく姿は実にかわいらしい。しかし、今回のそれは豆粒じゃない。足先まで含めたら掌サイズはあろうか?とにかく想像していた蜘蛛よりデカい。熱帯地域にいるタランチュラを彷彿させるデカさ。流石に、私も初めて見た時は少しビビった。自然から離れ都会という色に染まってしまったがために、掌サイズの蜘蛛に、自分よりはるかに小さい蜘蛛に私はビビってしまったのだ。しかし、獣医師という職業柄なのか、私が本来持つ『動物が好き♡』という性質からなのか、次第にこの蜘蛛の種類が何なのかが気になり始めた。それを知るために、もっと近づいてみよう。


この蜘蛛、足が長い。そのためか、『アシダカグモ』というらしい。

分類:節足動物門 クモ綱 クモ目 アシダカグモ科 アシダカグモ属 アシダカグモ

このアシダカグモ、私たちにはとても有益な蜘蛛で、ゴギブリを食べてくれるのだそうだ。長い足のおかげで機動力に長け、床でも天井でも壁でも素早く動き、ゴキブリが気づいた時にはすでに捕食されている。アシダカグモが2、3匹いれば、その家に住むゴキブリは半年で全滅するらしい。そこからついた異名は『軍曹』。実に仕事熱心で捕食中でも新たな標的が現れたらそちらを捕食しに行く。そして、標的がいなくなれば、新たな獲物を求め次なる戦場へと赴く。つまり、軍曹がいなくなったということは、ゴキブリがいなくなったということ。

この箕面に赴任してきた軍曹は、外に撤退していただいた(捕獲して外に解き放った)。

が、後日また戻ってきてしまった。

後日その1

後日その2

これらの写真の中に軍曹は潜んでいる。どこにいるか探してみていただきたい。

彼らは臆病であり、自分より大きい存在である人や犬、猫に対して害を及ぼすことはなく、本来人前に姿を現わすことは滅多にない。

こうして、軍曹のことを知れば、見た目はともかくとして愛着が湧いてこないだろうか?今はもうその姿を拝むことはなくなってしまったので、新たな戦地に赴いたのであろう。またいつの日か、私たちの宿敵であるゴキブリが暗躍する頃(おそらく夏頃)に軍曹にお会いしたいものである。
万が一、診察中に出会った場合は決してパニックは起こさず、そっと一言
「お勤めご苦労様です」
と挨拶しようと思うのである。

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