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2021.10.09

ペットの病気

腎不全治療への新たなる取り組み

こんにちは
動物メディカルセンターの獣医師の金崎です!
残暑も過ぎ去り、風の中にも秋の気配を感じる季節となってきましたね。
そんな10月は読書の秋!
ということで今回のテーマは私が読んで非常に印象深かった本

『猫が30歳まで生きる日』について少しお話しさせてください。

強烈なタイトルですよね。
私自身が多くの猫ちゃん達と生活を共にしているので、みんなが30歳まで生きてくれるのならばこんなに幸せなことはないと思い、本書を手に取りました。

さて、読者の皆様は最近のニュースで話題となったAIMというタンパク質をご存知でしょうか?
AIMとは…

Apoptosis = 細胞死
Inhibitor of  = 抑制する
Macrophage = マクロファージ

これらの頭文字を取った造語であり、つまり体内の不要なゴミを食べて掃除してくれる働きを持つタンパク質の一種です。

AIMは医学において腎臓病やアルツハイマー型認知症、自己免疫疾患などの治療が困難とされている疾病への治療効果が期待されています。

そんなAIMですが、人では掃除の補助としてしっかり役目を果たしますが、実は猫ちゃんのAIMはほとんど機能していないとされています。
そのため、猫ちゃんの場合には掃除しきれなかったゴミが腎臓に蓄積してしまうことから腎臓病に罹ってしまいやすいとされています。

腎臓がダメージを受けて十分に機能しなくなる状態を「腎不全」といい、これが長期間続くと慢性腎臓病(慢性腎不全)と診断されます。
慢性腎臓病(慢性腎不全)は猫ちゃんの老齢期での発症が多く、死亡率の高い病気です。

そこで、「ヒトのAIMの研究成果を猫に応用したら、猫の腎臓病への効果も期待できるのでは?」ということで、研究が進められました。

本書ではこのAIMの発見と、それを実際の医療現場に活かすための研究の過程がイラストなどを交えつつとてもわかりやすく紹介されており、専門的な知識がなくとも誰でも理解し易い内容となっています。
また、宮崎徹先生の研究者としての考え方や生き方、研究者という垣根を超えた人と人の繋がりにまつわるエピソードの数々は、単純に読み物としても非常に魅力的です。

医学において治療困難とされている病気だけでなく、猫ちゃん達の宿命とも言われている腎臓病に対しても希望の光になり得るかもしれないAIMというタンパク質について、この本を通して多くの方々に知ってもらえたら、と思います!

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