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2023.03.11
腫瘍科
こんにちは
動物メディカルセンターの獣医師 高橋です。
もう去年のことになりますが、久々に対面形式の獣医学会に参加させていただきました。
スーツ姿は、いつもと雰囲気が違って、すれ違っても気づかない!?
コロナの影響でオンライン学会になって3年経ちましたが、皆さんが集まっての学会は、ある意味熱狂的でした。
学会では、病気や薬について、手術テクニック等の最新の知見が得られますし、症例発表で他の獣医師のご経験も聞くことができ、とても有益です。
今回の学会で気になったのが「ラパチニブ」という抗がん剤の話でした。
人では乳癌の治療薬として使用されているものです。東京大学の研究で、これが犬の膀胱癌に有効な治療方法であると2022年1月にScientific Reportsという雑誌に掲載されました。
犬の膀胱癌の症状は、頻尿や血尿、排尿障害が多く、膀胱炎としての症状と似ていて、検査していくと膀胱内に癌が見つかるというのが多いです。この膀胱癌ですが、見つかった時には転移していたり、外科切除が困難であったりと、私達や飼い主様を悩ませるものになります。
基本的に内科治療となることが多く、NSAIDsといわれるお薬の単独使用や、NSAIDsと様々な抗がん剤を併用していくことが多くなります。今回のラパチニブもNSAIDsと併用しての研究結果でしたが、NSAIDs単独と比較すると、生存期間中央値が2倍近くになるという結果でした。
そして、このラパチニブは膀胱癌だけでなく、他の腫瘍にも効果があるかもしれないと研究が続いています。もう少し実際の臨床データが出てこないと、日々の診療に取り入れるには尚早なのですが、将来有望なので続報を待とうと思っています。
人医療と同様に獣医療も日進月歩しています。一年経てば、また別の方法が出てくるかもしれない。その時その時にベストな治療方法を提案できたらと思います。